耳鳴(みみなり)の原因と治療について

みみ
カナ
カナ

こんにちは!今日は耳鳴の話をします!

耳鳴とは

耳鳴とは「明らかな体外音源がないにも関わらず感じる異常な音感覚」と定義されています。

実際に体の外側発生している音がないにも関わらずに聞こえてしまう音のことです。

「キーン」や「ジー」などの音を訴える方が多い印象ですが、人によって様々な音を感じます。

日本人の有病率は10-15%で、65歳以上の方の約30%に耳鳴があると言われています。

耳鳴の分類

他覚的耳鳴自覚的耳鳴に分かれます。

他覚的耳鳴

他覚的耳鳴とは、体内に音源があり、第三者が聞くことのできる耳鳴です。

筋性耳鳴血管性耳鳴に分類されます。

筋性耳鳴

筋性耳鳴とは耳、あるいはその周囲の筋の律動的収縮で起こります。

口蓋帆張筋、口蓋帆挙筋、鼓膜張筋、アブミ骨筋、耳管咽頭筋、上咽頭収縮筋が原因筋として報告されており、軟口蓋ミオクローヌスが代表疾患です。カチカチと機械的な音が生じます。

血管性耳鳴

血管性耳鳴は耳周囲の血流が渦巻いて流れることで起こります。

原因としては動静脈瘻、動脈瘤、頸動脈狭窄、動静脈奇形、内頸動脈走行異常、血流亢進状態、グロームス腫瘍、特発性頭蓋内圧亢進症(BHI)、微小血管圧迫症候群、頸動脈(椎骨動脈)解離、上半規管裂隙症候群、高位頸静脈球、静脈洞閉塞、キアリ奇形などがあります。

自覚的耳鳴

自覚的耳鳴は、体内にも音源がなく、自分自身だけが聞くことができる耳鳴です。

耳鳴を自覚して受診される方の多くが自覚的耳鳴にあたります。

難聴が原因で起こるとされており、脳に音が入らないことで脳の音に関する感度が増加し、耳鳴が発生していると言われています。

カナ
カナ

難聴があると脳が音をよく聞こうとするので、音に対する感度が上がって、逆に音を作り出してしまうんですね。

耳鳴は、日中忙しくしていると気にならないけど、夜寝る前に静かになると気になってしまうという特徴があります。明るいところにロウソクの明かりが灯っているのと、暗いところでロウソクの明かりが灯っているのとでは目立ち方が全然違うように、耳鳴は常に鳴っているけれど、雑音の中では気にならず、静かな環境の中では際立って聞こえてしまうことが原因です。

耳鳴の診断アルゴリズム

まずは耳鳴の性状が拍動性非拍動性かを確認します。

拍動性耳鳴

拍動性耳鳴は耳鳴全体の10-15%とされ、その約70%が他覚的に聴取されます。

主に上記の血管性耳鳴が原因であり、画像検査(頭部MRI、MRA、CT等)を行います。

治療が可能な疾患であれば治療を行います。

非拍動性耳鳴

非拍動性耳鳴の場合は発作性急性(3ヶ月未満)慢性(3ヶ月以上持続)に分類します。

発作性

発作性の耳鳴は筋性耳鳴のことがあります。

鼓膜や軟口蓋に不随意運動が認められれば容易に診断することができます。

急性(3ヶ月未満)

  • 突発性難聴
  • 急性低音障害型感音難聴(ALHL)
  • 音響外傷

などが原因となります。

カナ
カナ

急に耳鳴が始まった場合、突発性難聴等急性の難聴の可能性があり、急いで治療する必要があるので病院を受診するようにしましょう。

慢性(3ヶ月以上持続)

難聴あり
  • 慢性中耳炎
  • 耳硬化症
  • 耳管機能障害
  • 加齢性難聴
  • 騒音性難聴
  • 薬剤性難聴
  • 遺伝性難聴
  • 聴神経腫瘍

などの可能性があります。

難聴なし
  • 無難聴性耳鳴

となります。

頭痛あり
  • 特発性頭蓋内圧亢進症
  • キアリ奇形
  • 頭蓋内占拠性病変

の可能性があります。

精神疾患あり

うつ病や不安障害、不眠症がある場合は精神科での治療が必要になります。

耳鳴の治療(自覚的耳鳴の治療)

推奨度1A(強い推奨、強い根拠に基づく)

補聴器装用(難聴がある方)

耳鳴は難聴であることが原因で起こるため、補聴器から音を入力してあげることで脳の音に対する感度を減らし、耳鳴の改善に繋がります。また補聴器を通して背景雑音が入ることで耳鳴のコントラストを少なくする効果もあります。

認知行動療法

認知行動療法とは、認知の偏りを修正して問題解決を手助けする治療法です。

耳鳴」が辛いのではなく、耳鳴によって起こる「不眠や不安、ストレス」が辛いのだということを正しく理解することで、耳鳴に対するネガティブな考えを払拭することが大事です。

海外ではかなりエビデンスの高い治療法ですが、国内では耳鳴に対する認知行動療法の報告はまだありません。

推奨度1B(強い推奨、弱い根拠に基づく)

教育的カウンセリング

教育的カウンセリングは聞こえの仕組みや、耳鳴発生のメカニズム治療目標治療方法等に関して説明をすることです。

耳鳴を理解してもらうために
耳鳴発生のメカニズム
カナ
カナ

難聴があると脳が音をよく聞こうとするので、音に対する感度が上がって、耳鳴を生じてしまいます。

耳鳴増悪のメカニズム
カナ
カナ

耳鳴増悪の誘因にネガティブな記憶ストレス等があります。

耳鳴をネガティブなものと判断することにより、より耳鳴に注意が集中し、悪循環となってしまします。

耳鳴の不安をとるために
カナ
カナ

耳鳴は脳の病気の予兆ではありません

耳鳴によって難聴が悪化するわけではありません

ストレスや疲れ、不眠などで増悪します。

良い時も悪い時もあります。

耳鳴治療のために
カナ
カナ

耳鳴治療の目標は、耳鳴による苦痛な状態が軽減し気にならない状態にすることです。

耳鳴を消すことは難しいですが、改善することはできます!

治療方法としては補聴器使用や後述する音響療法により耳鳴のコントラストを少なくする方法があります。

抑うつ状態の人には精神科での治療が必要になることがあります。

推奨度2C(弱い推奨、弱い根拠に基づく)

音響療法

音響療法は、により相対的に耳鳴を感じる強さを減少させて、耳鳴に対する順応を促進させることを目的としています。

環境音サウンドジェネレーター補聴器等を用いて耳に音を入れてあげます。

耳鳴より少し小さめ(耳鳴の7-8割程度)の大きさの音を耳に入れてあげることで、耳鳴から注意を逸らし、気になりにくくすることができます。

TRT(Tinnitus Retraining Therapy)

TRT音響療法教育的カウンセリングによって成り立っています。

耳鳴の仕組み治療目標をしっかり説明し、音響療法を用いて耳鳴に順応し苦痛を軽減させる治療法です。

薬物療法

内耳機能の改善を期待する薬剤
ビタミン製剤

ビタミンB12製剤(メチコバール®️等)は神経組織移行性に優れており、副作用も少ない薬剤です。特にビタミンB12が不足している患者さんの中では耳鳴重症度改善に効果があります。

血流改善薬、血管拡張薬

内耳の循環を改善させる効果があります。

ミソプロストール(サイトテック®︎)エノキサパリンナトリウム(クレキサン®️)は耳鳴に対し効果が認められており、ニコチン酸アミド・パパベリン配合錠(ストミンA®︎)は有意差はないものの、ある程度の効果は期待されています。

ステロイド製剤

突発性難聴や急性感音難聴に伴う耳鳴の場合、聴力改善を目的として副腎皮質ステロイド製剤の全身投与や鼓室内注射を行います。

耳鳴または耳鳴苦痛度を軽減する薬剤
抗痙攣薬

耳鳴に対する聴覚中枢の過活動を抑制する目的で使用されます。

ガバペンチン(ガバペン®️)、カルバマゼピン(テグレトール®️)等使用した文献がありますが、いずれも耳鳴に対する有効性は認められていません。

筋弛緩薬

肩こり、頸部緊張、筋緊張により耳鳴が増悪することに対して投与されることがあります。

バクロフェン(ギャバロン®️)等使用した文献がありますが、耳鳴に対する有効性は認められていません。

局所麻酔薬

リドカイン静脈注射が抹消および中枢に作用する可能性がありますが、耳鳴への効果は一過性のことが多く副作用も多いです。

抗不安薬

耳鳴による不安を軽減する目的で使用されます。

クロナゼパム(リボトリール®️)の有効性は認められていますが、副作用に注意しながら使用する必要があります。

抗うつ薬

うつ状態が見られる耳鳴患者に投与されます。

スルピリド(ドグマチール®️等)セルトラリン(ジェイゾロフト®️)オンダンセトロン(オンダンセトロン®️)アミトリプチリン(トリプタノール®️)等は耳鳴への有効性が認められています。

睡眠薬

メラトニン(ロゼレム®️等)は耳鳴への有効性が認められており、副作用も少ないため睡眠障害の方に使用することがあります。

漢方薬

漢方薬で症状軽減される報告があります。

イチョウ葉エキスは多くの分析が行われていますが、明らかな有効性は認められていません。

エビデンスは乏しいですが、苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)、釣藤散(チョウトウサン)、八味地黄丸(ハチミジオウガン)、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)、牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)、加味帰脾湯(カミキヒトウ)などを処方することがあります。

手術

人工内耳を要するような難聴の方に人工内耳手術を行うことは耳鳴において効果が期待されています。

推奨度2D(弱い推奨、とても弱い根拠に基づく)

鍼治療、レーザー治療、反復経頭蓋磁気刺激療法等があります。

耳鼻科医としてはほとんど行うことはありません。

終わりに

耳鳴には様々な原因があり、治療可能な病態であればまずは治療を行います。

難聴に伴う耳鳴に関しては補聴器装用や認知行動療法、教育的カウンセリング、音響療法等を行いながら、必要に応じて薬物治療等を行なっていきます。

カナ
カナ

それぞれの患者さんに合った治療を行なっていくので、気になる方は耳鼻咽喉科を受診するようにしてください!

参考:耳鳴診療ガイドライン2019年版. 一般社団法人 日本聴覚医学会 編, 金原出版 ; 2019

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